ルネサンスの言語への影響
この記事ではルネサンスが言語に与えた影響を解説しています。国語の普及、古典語の復興、文学の発展などに注目し、言語がどのように変化したのか詳しく探っていきましょう。

ルネサンスの言語への影響|どんな変化が起こった?

Dante Alighieri

ダンテ・アリギエーリ(1265-1321)
イタリアの詩人で、「神曲」の作者。彼の作品はイタリア語の標準化に大きな影響を与え、後世のルネサンス期の作家たちに広く読まれた。ダンテの使用したトスカーナ方言は、後にイタリア統一の基礎となる言語と考えられるようになり、イタリア文学だけでなくヨーロッパ文学にも深い影響を与えた(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

ルネサンス期はヨーロッパ全土で知識と文化が開花した時代であり、言語の発展にも重要な影響を与えました。この時代、古典ラテン語やギリシャ語が再評価されただけでなく、各国の母語が文学や学問の世界でも重視されるようになり、現代に通じる言語の基盤が形成されました。この記事では、ルネサンスが言語に与えた影響を詳しく見ていきます。

 

 

古典語の復興と学問への影響

ルネサンス期は「古典回帰」の時代とも言われ、古代ローマやギリシャの文化が再評価されました。言語の分野でも、ラテン語やギリシャ語の重要性が再認識され、これが学問や教育に大きな影響を与えました。

 

古代ラテン語の復興

ルネサンスの学者たちは、古代ローマの著作に立ち返り、純粋なラテン語を学び直しました。それまでの中世ヨーロッパでは、ラテン語が宗教や法学の言語として使用されていましたが、しばしば地方ごとの訛りや独自の表現が混ざり、変化していました。しかしルネサンスの時代に入り、古代のラテン文学を学び直し、「より純粋な形のラテン語」を復活させようとする動きが強まりました。

 

ギリシャ語の再発見

また、ギリシャ語もこの時代に再評価されました。中世ヨーロッパではギリシャ語はほとんど忘れ去られていましたが、ビザンツ帝国の崩壊(1453年)とともに、多くのギリシャの学者がイタリアに移り住み、古代ギリシャの著作や哲学がヨーロッパに再び伝わりました。この影響で、ギリシャ語の学習が復活し、プラトンやアリストテレスの哲学書が広く読まれるようになったのです。

 

教育と古典語の関係

ルネサンスの教育制度では、ラテン語とギリシャ語の知識が必須とされました。学問を志す者はこれらの古典語を学ぶことで、古代の知識を吸収し、当時の知識人層に認められるための教養としていました。この伝統は、近代に至るまでヨーロッパの教育の基本として続いたのです。

 

各国語の発展と文学への影響

ルネサンスのもう一つの重要な側面は、母語の発展でした。ルネサンス期には、ラテン語やギリシャ語が重視される一方で、各国の言語が文学や学問の分野でも用いられるようになりました。

 

ヴェルナキュラ(母語)の台頭

それまでの学問や文学は主にラテン語で書かれていましたが、ルネサンス期になると、各国語での執筆活動が活発化しました。この動きは、イタリアのダンテ(1265 - 1321)の『神曲』やジョヴァンニ・ボッカッチョ(1313 - 1375)の『デカメロン』に代表されます。これにより、イタリア語が文学の言語として定着し、他国でも母語が重視されるようになったのです。

 

英語の発展とシェイクスピア

イギリスでは、ウィリアム・シェイクスピア(1564 - 1616)が英語の発展に大きく貢献しました。彼の戯曲や詩は、当時の英語表現を豊かにし、後の英文学の基盤を築いたとされています。また、ルネサンスの精神が、英語文学全体にも影響を与え、文学の多様性が広がりました。

 

フランス語とルネサンス

フランスでも、フランソワ・ラブレー(1494 - 1553)やミシェル・ド・モンテーニュ(1533 - 1592)が、フランス語での著作を通じてフランス文学を発展させ、ラテン語ではなくフランス語が知識や思想を伝える媒体として認められるようになりました。これが近代フランス語の確立へと繋がったのです。

 

印刷技術と言語の普及

ルネサンスの言語発展において、印刷技術の発明も大きな役割を果たしました。ヨハネス・グーテンベルク(1400 - 1468)が発明した活版印刷が、知識の普及と共に各国語の発展を加速させました。

 

活版印刷と言語の広がり

グーテンベルクの発明した活版印刷技術により、書物が大量に印刷されるようになり言語の統一や標準化が進みました。これにより、地域ごとに異なっていた言語や方言が次第に統一され、国全体で同じ言語が使われるようになったのです。

 

聖書の翻訳と宗教改革

ルネサンス期には、宗教改革と結びつき、聖書が各国語に翻訳されました。ドイツのマルティン・ルター(1483 - 1546)によるドイツ語訳聖書は特に有名で、これがドイツ語の標準化にも寄与しました。また、英語やフランス語、その他の国々でも聖書の翻訳が進み、母語の普及に大きく貢献したのです。

 

教育と印刷技術の関係

印刷技術により、教育の普及も加速しました。書籍が安価で手に入るようになったことで、一般市民も知識を得やすくなり、読み書きの能力が広く社会に浸透するようになったのです。

 

以上、ルネサンスの言語への影響についての解説でした!

 

まとめると

 

  • 古典ラテン語やギリシャ語の復興が学問に影響を与えた
  • 各国語の台頭が文学や文化に多大な貢献をした
  • 印刷技術の発展が言語の普及と標準化を促進した

 

・・・という具合ですかね。

 

つまるところルネサンスは、古典語の復興と母語の発展を通じて、言語の発展に多大な影響を与えたという点を抑えておきましょう!